時景の中へ.

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緑と密度

 アメリカ全体もそうでしょうが、アナーバー周辺もおおよそ平坦です。丘による坂はそこそこありますが、山や谷はないので、なんでもだだっ広くなります。校舎も3階層くらいですし、道路も幅広く作れて、三車線+自転車道+歩道に街路樹という造りが多いです。地形的制約はないため、都市が広がっていき、それと同時に自動車社会も進展してきたという形でしょうか。アナーバーは大学を中心とした郊外型都市であることもあり、ダウンタウンは小さく低め、ダウンタウン以外の密度は住宅中心であるため、さらに住宅密度は薄くなります。空いたスペースに樹木があり、夏のこの時期はとても気持ちいいです。
 緑の多さもあって、住居の街区は静かで、一方通行やバンプの配置により、車の交通量も少なく、静穏です。こうした近隣街区内は、徒歩圏にbeverageとsnackやちょっとしたものを売っている小さなスーパーがあるくらいで、近隣住区のイメージそのものといえるでしょう。
 日本のコンビニくらいのサイズで、野菜や卵、冷凍肉などを置いた小型スーパーはダウンタウン近傍であれば、徒歩15分圏内にあり、生の肉などの生鮮食品などを置いた大型スーパーは幹線通り沿いにあり、車で10分圏内でアクセスという感じでしょうか。郊外に住んでいる場合は、車は必須です。大型スーパーはレストラン・薬局などとまとめて一箇所に立地していて、公共交通(バス)でもアクセス可能です。幹線通り沿いは、商業施設があるエリアと緑や住宅が配置してあるエリアの抑揚があり、ロードサイド商業が隣接し、連綿と続くという風景はほとんどないです。また、幹線通り沿いの施設への車でのアクセスも、車道が広いため、逆車線横断車両向けの待ち合い用の車線が用意してあり、交通流はスムーズです。
 
 アメリカの道路交通環境は、明石とつくばを比べて、つくばの方が広々としていて、走りやすく、車の移動がスムーズいうことと近いものがあります。思い返してみると、つくばは神姫地区と違って、平坦で利用可能な土地が広いため、店舗も広くでき、抑揚のある土地利用(規制)が可能になります。アナーバー一帯はそれがさらに強まった感じです。神姫地区のように、利用できる土地に限りがあれば、どうしても、住宅は混雑し、道は狭く、土地利用の差(抑揚)も小さくなります。
 
 こう考えると、アメリカ型近隣住区の土地利用とその配置を日本で適用できる場所はかなり限定されるでしょう。その前提の中で、いかに日本型のモデル・イメージを蓄積していくのかを考えるべきといえるでしょう。特に高密な住宅立地の間をぬう形での車の通行は、車・歩行者の双方にとって避けたく、車ではなく、自転車や鉄道が普及してきた状況を想定した中で、どのようなモデル地区が可能かを考えていく余地がありそうです。