時景の中へ.

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ミシガン周りのCOVID-19の状況2

 あっという間に状況が変わっていきます.
 週があけて,3/17(火)の晩には,校舎は減産(Ramp down)に入るため,必要不可欠なラボ(動物の世話,機器のメンテナンスなど)を除いて,完全にシャットダウンされるという情報が内々に通達されました.19日には正式に発表され,20日の5pm以降は,ごく一部以外は校舎に入れなくなりました.Fully remote workingです.ミシガン州は感染者が,日々増えていき,3/20時点で感染者549人,死者3人まで増えました(テストは2449人).次にくるとすれば,外出禁止ですね..(なお,健康医療系は管轄が郡単位(4・5市で構成)です(※避難関連もそうでした).外出禁止が出るとしたら,隣郡が先ですかね)

 大学内のほぼ全ての部署のHPもCOVID-19の情報がトップに来るように更新されており.完全に災害時状態です.remote workやonline classのhow to,博士学生サポートの情報等は続々と出されています.それだけではなく,学内のオンライン提供可能な教材や図書館貯蔵の映画等も続々とフリーで提供されています.各国そうでしょうが,子供たちをどう学ばせるか,遊ばせるかという情報提供・動画も多いですが,大人も学べる・過ごせるようなサポート・発信が多く出てきています.

Online course by U-Michigan(学内無料)
Live by Ann Arbor District Library (先生が自宅から発信)
STEM教材 by Boston Children's Museum

 学校がなくなった子供向けのfreeの昼食提供ですが,速やかにマップまで公開されました(MAP). どうやら,元々毎年12月に余っている食べ物をみんなで集めて貧困家庭を援助するという活動があるのですが,その団体の働きも大きいようです(Food Gathering).

 HPの更新やオンラインコースの提供,ひとつとっても,日常を回すので手一杯になっていると,スキル・備えがないので,なかなかこのようにはいきません.やはり,常日頃の活動延長や日頃の活動の(最新技術を志向した)アップデートの流れの中で,有事に少し手を加えることで,色々な協力・連携が可能になるのだろうと感じます.

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ちなみに,Pittsburghのスパコンのリソースも感染症研究グループに優先的に配分されてたりしているようです.

ミシガン周りのCOVID-19の状況1

3/11朝についに州内でCOVID-19の陽性患者さんが出て,州で非常事態宣言が出ました (News). 二人ともアナーバー市に隣接する郡に住まいの方でした. ニュースでは,"We are Michiganders. We are tough. We will get through this. Until then make sure you and your families will take the necessary steps to stay safe,"という言葉に精神論を感じましたが,,

 

3/11の午後3時40分には,大学の授業の全オンライン化のアナウンスが流れました(Link(時系列で更新されます)).とりあえず,今週は授業はなし,来週からオンライン授業のみ,100人以上の集会はなし,海外渡航は最大限とりやめ,国内旅行も出来る限り自粛,というannouncementでした.期間は5週間で,春学期が終わる4/21までです.

 

すこぶる判断が早いですが,3/9にはカリフォルニアのStanford Universityでもオンライン化になっていて(News),3/10にはHarvardも休校・オンライン移行を発表していて(どちらの大学もスタッフが陽性),想定・準備をしていたのでしょう.もちろん,各国の情報を見ていますし,Health care関係の研究者も多いので,情報は豊富にあったのでしょうか.

 

早めの対応の根拠となった考え方は,こちらのようです.flattening the curveということで,医療崩壊が起きないように,できる限りピークを遅め,感染者数の最大数の山を低めることが大事というアプローチです. 同時に,Howard Markel, M.D., Ph.D.の"An outbreak anywhere can go everywhere. We all need to pitch in to try to prevent cases both within ourselves and in our communities."という言葉を出して,協調の精神を説いています.ちなみに,It’s called “flattening the curve,” a term that public health officials use all the time but that many Americans just heard for the first time this week.ということで,専門用語をわかりやすく浸透させつつ,説明をきちんとしているという取り組みと言えます.アナーバー市の公共施設の案内でも,できる限り感染速度を緩めるために~~するということをアナウンスしているそうです.学術知識の一般社会へのリーチをしっかりと行っているという点でも,非常に勉強になります. また,早目の対応となって理由として,大学の授業のオンライン化の準備が既に整っているということもあると思います(これは,またまとめます).

 

そうこうしているうちに,3/12の夜には市内のPublic school(※どうやらうミシガン州内の全小学校が対象)の3週間の学校閉鎖がアナウンスされました(News).とりあえず,明日の午前中は登校し,休みに備えて,遠隔教育へのアクセス可能かの確認などを行うようです.必要な子供たちへは,food, electronic devices and wifi servicesを提供できるように計画中ということです.学校として,教育と昼間の最低限の食事を担っているという意識の下で動いているようですね.
 (3/20 追加: Summer Food Service Program (MAP)も公開)

 

オランダは,「小学校、中学・高校、専門学校、チャイルドケアは、引き続きオープンする。そこでは、ほとんど感染がなく、環境は国際的ではない。さらに、子供や若者は、ハイリスクグループではない。加えて、これらの教育機関を閉鎖した場合に親が仕事を休まざるを得なくなり、自宅待機できない職種に多大な影響をもたらすため、その社会的な結果は、重大であり、かつ、蔓延防止にほとんど貢献しない。ただし,風邪症状を持つ子供たち及び教師は,自宅待機すべきである。(在オランダ日本国大使館より)」という対応のようです.比較すると,アナーバーは絶対に感染速度を遅らせるという意思を感じます.もちろん,リモート勤務の設備の違い等もあるとは思います.アナーバーの子供はわりと国際的な環境に置かれていますし.

Citrus Bowl in 2020

#17 University of Michigan Wolverines (9-3, 6-3 Big Ten) at
#9 University of Alabama Crimson Tide (10-2, 6-2 SEC)
Camping World Stadium • Orlando, Fla.
Wednesday, Jan. 1, 2020 • 1:07 p.m. EST

大学フットボールアメリカの正月の風物詩のようで,少しだけテレビで観戦しました.(ラボの学生に聞いたところ)Bowl Game シリーズはカレッジフットボールの甲子園的な感じで,それまでカンファレンスに分かれて試合をしていた大学から16チームを選んで,各地で2試合行い,そこからさらに4チームを選んで,トーナメントでchanmpionを決める仕組みとのことです.国土も広く,試合間隔も詰めれないので,完全なトーナメントにはできません.

Citrus Bowlはその一回戦の中の一つのゲームで,場所はOrlandoに固定で,やってくる大学は毎年違うようです.ミシガン大の応援にみんなで行こう的な案内も出回っていました.冬は寒いので,暖かい場所固定でやるのは,観戦者にもありがたいですね.地元の人たちもゲームが毎年恒例で見れるのはありがたいですし.場所をそれぞれ分散させてやるというのも面白いですね(日本にはない感覚).

ミシガン大のチームの作ったゲームプレビューとアラカルト情報がこちらなのですが,48ページにも及ぶというのが驚きでした.今シーズンの細かな話しや過去の記録も沢山あるのですが,それにしてもすごい分量.これを眺めてて,Tom Bradyがミシガン大にいたのも驚きでした.

Q-Line @ Detroit

 デトロイトLRTであるQ-Lineの見学に行ってきました.建設・運営はM-1 RAILというNPOが行っており,自治体からの直接的な援助などは特にないそうです.2012年に建設工事をはじめ,2017年から運行しています(運行距離 3.3mile). そもそも,SuperBowl 2006をデトロイトで行った際に,道路混雑がひどく,公共交通を作れないかと検討を開始したものの,デトロイトは自動車の町なので自治体などからの支援は得られず,自力での運営を行っているそうです.政治的困難さの中で,貧困層の移動手段としてバスしかない状況からの脱却にも繋がっています.(なお,出資は不動産を扱う地元の銀行Q社だそうです.いわゆる民鉄でしょうか.)

f:id:junji-urata:20191210135205j:plain f:id:junji-urata:20191210150728j:plain(すっきりしたデザインの車両)

 曲がりくねった道をまっすぐにしながら,線路をつけていったそうで,車も使いやすくなったそうです.また,LRTが走っていることで,通りの周辺に,レストランなどが出店するようになり,通りを復活させると価値もあったようです.NBAやNHLの試合を行うアリーナが合わせて出来たことも大きいそうです.こうした都市空間のリビルトも含めた公共交通開発である点は興味深いです.

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 LRT区間中の80%はwireなし(バッテリー活用)で走っており,道の上空もすっきりしています.信号優先権はあるようですが,reliabilityの観点からか通勤の足とはなっておらず,お酒を飲むお出かけの際などの遊興目的の移動の際に使われているそうです.6つの車両を10min間隔で運行させ,徐々に運用状況は改善していて,3000人/日の乗車人員だそうです.現在は,Detroit Department of Transportationが運用するバスとの共通料金体制が始まっています.まだ運行している距離も長くないですが,持続的に続いていってほしいです.

 そもそも,このQ-Lineが走っているWoodward Avenueは,全米で最初にConcreteのPavementが出来た場所であり,非常に栄えた通りであり,交通的にも重要な通りだったはずです.そうした通りが再び交通の力を借りながら,復活していけるようであれば,面白い事だと思います(空間的・地理的必然性のある場所がいつの時代も栄えやすいのでは,という点で).

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(19C中頃から,デトロイトでもケーブルカーは非常に活躍していた 参考

 

ミシガン大学と日本の関わり

 僕の住まいからは車で30分ほどで日本食スーパーで食材を調達できたり,日本語で診療が受けれたり,と恵まれているなと感じます. これは,Detroit/Ann Arbor周辺には日本の企業の進出が多いためで,それはDetroitが自動車産業で発展したからだと思っていましたが,こちらの記事によると,歴史はもっと深いようです.

 (詳細は記事を読めばわかりますが,抜粋+リンク付加すると) ミシガン大学と日本人の最初の関わりは1870年代だそうです.その時に訪れた日本人留学生のグループには,のちに東大の日本人初の教授や東大総長,文部大臣となった外山正一(*1)が含まれていたそうです.また,1887年には後に日本興業銀行総裁となる小野英二郎ミシガン大学大学院に進み,博士論文"The Industrial Transition in Japan"により1889年に博士号を取得したそうです.

 そうした友好関係は一変し,太平洋戦争中は米国陸軍の日本語教育学校が作られ,日系人強制収容所から連れてこられた人たちが日本語を教えていたそうです.戦後は,日本研究の中心的な大学となり,1947年に北米初の日本研究センターが設立され,多くのアメリカの日本研究者を岡山に連れてきた岡山フィールドステーションの設置等,多くの日本研究が進められたそうです.戦後直後にこうした日本研究が行われていたことは驚きです.また,Center fro Japanese Studiesは現在も積極的に活動しています(*2).また,1953年には明仁皇太子(当時)がミシガン大学に訪問しており,ミシガン大学と日本の親交の深い様子が伺えます.

 こうした背景の下,1980年代に日米貿易摩擦が進むにつれ,米の自動車産業界と日本の自動車産業界を結ぶ役割をミシガン大学に所属する日本研究者が果たしていたそうです.こうした過程の上で,デトロイト周辺への日本自動車企業の進出が進んでいったのでしょう(*3).

 このように,歴史的に深い関わりの中で現在が生まれていることは,必然ではありますが,国外の居住地で日本との繋がりを体感するとは思ってもみませんでした.歴史の中の多くの人のおかげで,今のAnn Arborでの生活があることを感じるとともに,自分が何を残せるのかを考えなければなと思います.